最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)154号 判決
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人の上告趣旨第三點について。
しかし、原判決は、判示第一乃至第四の事実認定の資料の一として、原審における被告人の供述を録取した公判調書の記載を擧示したものではなく、原判決の基礎となった原審第二回公判における被告人の判示同趣旨の供述そのものを採用したものである。そして公判における被告人の供述を公判調書に録取するには、その供述内容をそのまゝ記載するを要せず、記録における他の書類の同一内容の記載部分を適宜引用することを妨ぐるものではない。今原審の第二回公判調書によれば、被告人は同公判廷において、第一回の公判調書記載と同一趣旨の陳述を爲した旨の記載あり、同第一回の公判調書によれば、同調書に引用せられている所論の第一審の判決理由の記載と相俟って、判旨同趣旨の供述を爲した旨の記載があるから、これらの記載から、被告人は原審第二回公判廷において判示同趣旨の供述を爲したこと明白である。それ故、原判決が、證據としてその判示同趣旨の供述を擧示したのは、證據説明としての證據内容の擧示に、何等缺くるところはない。論旨は、その理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑訴第四百四十六條に從い主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)